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2017年3月 6日 (月)

豆カレーを捨てる

冷凍庫に4年8か月の間眠っていた、自家製豆カレーを捨てた。通常「早く捨てろよ」な代物だが、私には意味があった。なんとういうか、よくSF映画にある不治の病や重症の患者を冷凍保存して、「未来に希望を託す」みたいな感じに問題を先送りしているみたいな、アレ。

豆カレーとは、亡夫の好物で、大豆の缶詰と合いびき肉と野菜その他で私が作ったもの。肉800グラムに対し、15本くらいの鷹の爪を投入し、豆板醤も入れて、これでもかと辛く作る。しかし夫は「これは、家でしか食べられない味だよねえ♪」と、半ばむせながら、辛い辛いカレーを好んで食べた。

よくある世間話で「死ぬ前に最後に食べたいものは?」と聞かれて、皆がアレコレ考えるというのがあるが、夫は「ふらちゃんの豆カレーだな」と真面目に答えるくらい、豆カレーが好きだった。

そんなもしかすると心温まるエピソードだったかもしれない豆カレーなのに、私は、あの時なんで夫に食べさせちゃったんだろう、と今でも悔やむ。冷凍庫に無ければよかったのに、と。
夫が亡くなる前々日、私は家事をさぼっていた。買い物に行っておらず、家には食材がなかった。夕方になり、今日の夕飯どうしようーとなった時、彼は「豆カレーがいいな」と言った。私は「あーそれなら冷凍しているのが、あるね」と答え、即座に、解凍するだけ楽ちん夕飯に同意した。

それを食べて、彼はいつになく穏やかな顔を私に見せて土日を過ごし、月曜日、自らの命を絶ってしまった。

私は、月曜日の朝、もうその時は多分、心肺停止状態であったであろう、彼と対面した。意識を失っている人と対面して思ったことは、怖くて、息をしているかの確認なんて、普通の人には到底できないということ。悪化させてしまったらどうしよう、と、触ることさえできない。
今、思い起こすと駆けつけた救急車の隊員さんは、そんなに焦っていなかったように思える。もう、無理だと経験からわかっていたのかもしれない。

というわけで、土曜日に食べてもなおまだ2食分冷凍庫に残っていた当時の豆カレーに関しては、色々と思うところがあった。それは、これを捨てたら夫との思い出が消えてしまう悲しさや怖さだったり、これを食べさせなかったら、夫の気が変わって運命変わったかもなあといったタラレバだったり、名前の付けられない感情であり、だからこそ、ウジウジと食べもしないのに腐らないのをいいことに長年冷凍庫の隅に、豆カレーのジップロックコンテナを残していたのだった。

だけど、もういいかって思った。
先輩の未亡人さん方のツイートを見ると、夫との思い出のものが捨てられない人はたくさんいた。でもいつか自分で決めて捨てられる時がくるとの話もあった。私にも、その時がきたようだ。
今年の正月に夫が亡くなって以来初めて豆カレー(唐辛子は少な目一般人用)を作り、友達に食べてもらって、何か浄化できた気持ちになったのかもしれない。何が解決したわけでもないのだけど、思い出の冷凍保存カレーは無くても大丈夫、そういう気分になれた。
自分のために冷凍庫のスペースを使うことにした。

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